和食と日本人①(うま味と日本人)
日本は海に囲まれ国土の約7割が山地で「春夏秋冬」の四季があります。温暖で雨に恵まれ稲の栽培に適していたことから、水田で「米」を作り主食としてきました。
日本は四季折々の海や山や農地からの食材に恵まれた国です。日本人は四季折々の食材を与えてくれる自然を敬い、自然と共に生き、自然を大切にする心を育て、後世に受け継いできました。
お茶碗にご飯粒が残っていると「一粒のお米の中には7人の神様がいる。もったいない。」と言われたことを懐かしく思い出される方もおられるのではないでしょうか?
日本人は万物に神が宿ると信じて、感謝を捧げてきたのですね。
日本人は自然の味を大切にします。食材に味をつけることに主をおく海外の調理方法に比べ、和食は素材の味を引き出す調理方法を好みます。フランス料理は「ソースが命」と言われますが、和食の決め手は「だし」なのです。
うどん屋さんの前を通ったら、中から何ともいえない食欲をそそる良い香りがしてくる。
日本人は「かつおと昆布で丁寧にとっただし」と聞いただけで、頬が緩んでホッコリ幸せな気持ちになるのに対し、外国人には「だし」の味は「生臭い。まずい」と好まれない傾向にあるそうです。
鰹節の「うま味」の成分は「イノシン酸」で、昆布の「うま味」の成分は「グルタミン酸」です。動物性の鰹の「うま味」と植物性の昆布の「うま味」を組み合わせると相乗効果で、「うま味」がアップします。「イノシン酸」と「グルタミン酸」を組み合わせることで、「うま味」は5~8倍にアップするというから驚きです。「うま味」を感じる味覚を持つ日本人だからこそ、このような使い方ができるのです。
「うま味」を発見したのは日本人です。1908年、東京帝国大学の池田菊苗教授が、昆布からグルタミン酸を取り出すことに成功し「うま味」と名付けました。「日本の十大発明」のひとつで、日本語の「UmAmI」のままで世界に通用するのです。
現在では「うま味」は基本味である五味のひとつになっています。
「甘味」、「塩味」、「酸味」、「苦味」、そして「うま味」
うま味を基本味に加えるにあたり、海外から反対があがりました。「甘みに塩を加えた味がうま味だろう」と理解されなかったのです。
日本人の舌に感じる「うま味」が外国人には、中々理解できなかったからです。
「うま味」が基本味に加えられたのは、舌の味蕾に存在する感覚細胞にグルタミン酸受容体が発見されてからです。「うま味」の発見から約80年後のことです。そしてやっと「うま味」が味覚のひとつとして認められるようになりました。
日本人の舌なら当たり前に感じることのできる「うま味」。
その味を感じられるのは素材の味を引き出す「日本人の味付けの歴史」と幼児期から繰り返し「だしのうま味」を口にしてきた食経験により、「うま味」をおいしいと感じるようになるのです。
「おいしい=うまい」
私たちは「おいしい事をうまい!」と言いますね。
「うま味」を愛する日本人らしい表現だなぁ!と私は思います。
一般社団法人 味付けアドバイザー協会は、日本独自の伝統的な家庭料理の味付けを指導する「味付けアドバイザー」を育成し、日本の素晴らしい食文化を広く国内外に発信することを目的としています。